甘い恋をおしえて
***
佑貴が薄茶を飲み終えて茶碗を戻したので、莉帆は作法通りに清めた。
昨夜から覚悟はしていたが、いざ目の前に佑貴を迎えると心が騒めく。
だから、父は落ち着くように『茶室で話せ』と莉帆に言ったのだろう。
「君に、謝りたかった」
「謝る? あの茶会のことは父にも兄にも謝罪してくれたんでしょう?」
「君を避けてしまったことだ」
いきなり佑貴が結婚生活のことに触れてきた。
狭い茶室にいるからか、お互いに無防備で自分をさらけ出せる。
莉帆も、これまで言えなかった自分の思いを正直に話すことにした。
「仕方ないわ。あなたは私と結婚したくなかったんでしょう?」
「それは違う!」
佑貴ははっきりと否定する。
「君に許しを請わなければいけないことがあるんだ」
「……どういうことでしょう」
佑貴の話したいことに思いが至らず、莉帆の疑問は増えるばかりだ。
「さっきお義父さんには話したが、とんでもない理由で君との結婚が決まっていた」