甘い恋をおしえて
「なにも知らない君を、巻き込んでしまった」
ーー佑貴の話は、莉帆には信じられないことばかりだった。
登美子のしたことは、もちろん許せないことだ。
莉帆との縁談を進めた千紘が、なにもかも知りながら隠していたのも驚きだった。
たまたま茶会で登美子の姿を見てしまっただけで、莉帆は宮川家の名誉のために取り込まれてしまった。
登美子がなにか埋めていたことを思い出しても嫁の立場ならなにも言えないし、香風庵を助けたら文句はないだろうということか。
「千紘さんが気にしていたのは、私の記憶だったのね」
莉帆と結ばれてから、佑貴は千紘のたくらみに気がついたと言う。
あの朝、佑貴と茶会の話をしたことが思い出された。
まさかあの気怠い朝の会話が離婚に繋がっていたとは、莉帆は考えもしなかった。
「でもあなたから話を聞くまで、登美子おばあ様が菓子鉢を埋めたことと千紘さんのおまじないの話は結びつかなかったわ」
小夜子への嫉妬心が登美子をこんな大変なことに走らせたのかと胸が痛む。
「皆さん、私の顔を見るのもお嫌だったでしょうに」
憎い女の孫を佑貴の嫁として迎えた登美子や、その娘にあたる寿江や千紘はどんな気持だったろう。
三人とも表面上は、莉帆に当たることはなかったのだ。寿江の後継ぎの要求を除けばだが。
「君は優しいな」
「私が?」
「自分にされたことより、祖母たちの気持ちを思いやってくれている」