甘い恋をおしえて
「すまない。香風庵を復活させたかった君に、気の進まない結婚をさせてしまったとずっと思っていた」
「宮川家の名誉のために、あなたを私との結婚という義務で縛りつけたと思っていたの」
ふたりは胸にしまい込んでいた気持ちをぶつけ合う。
佑貴は信じられないとでもいうように、莉帆をじっと見る。
「嫌な男と、店のために結婚を決めたんじゃあないのか?」
「あなたは宮川家の評判を高めるために、昔見捨てた家の娘と結婚したんでしょ?」
見つめあったまま、ふたりは互いの気持ちを探り合った。
誤解が解けたら、その先にあるのはなんなのか知りたいのだ。
「お互いに間違っていたのか……」
佑貴の言葉が重かった。ふたりとも、間違えていたのだ。
「何年も無駄にしていたのか、俺たち」
初夜にキチンと向き合っていれば、もしかしたらこんなに拗れてはいなかったかもしれない。
だが、結婚式の夜に莉帆は急病で倒れていた。
「俺は、君が好きだ」
「佑貴さん」
「もう一度やり直せるものなら、あの結婚式の日から、いや、もっと前からやり直したいくらいだ」
佑貴の言葉が、莉帆の心の奥にあった冷たい塊を溶かしていく。
結婚式の後、ひとりでのみ込んでしまった愛を凍らせた結晶だ。
「私だがけ好きなのかと思ってた」
「君の気持ちさえわかっていたら……俺はバカだな」