甘い恋をおしえて
一瞬なにを聞かれたのかわからなかった。年齢のことかと気がついて、慌てて答える。
「この春で、二十四になりました」
「そう。確か大学で栄養学を学ばれたとか」
千紘はさり気なく話題にするが、莉帆は驚いた。
もう何年も交流がなかったのに、莉帆が女子大で学んだ科目まで知っているのはどうしてだろう。
「はい。店の力になれるように勉強しました」
「えらいわね」
千紘はニコリと微笑んだ。
「どなたかお付き合いしている方とかいらっしゃる?」
「は?」
いきなりの質問に、莉帆は変な声を出してしまった。
「いえ、毎日忙しいので……」
「あら、こんなにお綺麗になったのに」
褒めてくれているのかどうか千紘の真意が見えなくて、莉帆は冷や汗をかいていた。
「あなた、私たちの家のこと……お聞きになってる?」
千紘が探るように聞いてきたので、莉帆は正直に答えた。
「両家の、過去のことでしょうか?」
こくりと千紘が頷く。
「大昔のことだけど、世間っていつまでも覚えているのよね」
「はい」
ウエイターがコーヒーを運んできて、ふたりの前にそっと置く。
いい香りに誘われて、莉帆は落ち着くためにとブラックのままひと口飲んだ。
千紘は綺麗な仕草でミルクを入れるとカップを口に運ぶ。