甘い恋をおしえて


先ほどから『お義母様は?』とご婦人方から質問攻めにあうし、中には『今日はご主人様はどうなさったの?』というお節介な問いもある。
辟易しながらも莉帆は絵顔を張り付けていたが、そろそろ疲れが出始めている。

(来るわけがない……)

結婚して間もなく三年になる夫の佑貴は、こんな集まりは嫌いなはずだ。
しかも莉帆と連れ立ってなんて、絶対に嫌がるだろう。
莉帆と佑貴は契約結婚のようなものだから、未だに夫婦関係はない。

(さ、私はミッションをこなさなくては)

気持を切り替えて、莉帆は心の中で品定めを始めた。

(あちらにお姿が見えるのは、確か石油大手会社の社長のお孫様。たしか麗奈(れな)様っておっしゃったかしら。
大学御卒業が来春のはず。初々しくて愛らしい方……でもまだ四時なのに、カクテルを何杯もお飲みだわ。
お酒にお強いのはどうかしら? 宮川家に相応しくないってお義母様が言うでしょうね。
あの方より地味だけど、お茶席で優雅に振舞っておられた有栖川家の血を引くという寺門貴子(てらかどたかこ)様の方がお勧めだわ)

脳内に収めている令嬢たちのプロフイールとひとりひとりの振る舞いを確認していく。
今日も『この人なら!』という女性に巡り合っていない。

「莉帆ちゃん」



< 2 / 114 >

この作品をシェア

pagetop