甘い恋をおしえて
「莉帆! 気がついた!」
「お姉さん……」
ベッドに横たわる莉帆の側には、目を真っ赤に泣きはらした梓がいた。
「あれ? ここどこ?」
「もう、莉帆ってば」
梓が言うには、救急病院に着いたとたん莉帆は気を失ってしまったらしい。
慌ててタクシーの運転手や病院のスタッフが調べてくれて、バッグにあった名刺から香風庵に連絡が入ったようだ。
「そうだった……いたた……」
「莉帆は胃潰瘍で胃に穴が開くところだったんだよ。どれだけストレスため込んでたの!」
「ストレス?」
「やっぱりこの結婚が間違いだったのよ」
初めて梓が結婚について触れてきた。
「佑貴さんのことは子どもの頃の記憶があるからって、香風庵のために丸川様のお話だから断れないって」
莉帆が家族に話した幾つもの理由をあげながら、梓は泣き出した。
「やっぱり、お断りすればよかったのよ」
「梓姉さん、もう大丈夫だから。そんなこと言わないで」
ベッドで点滴を受けている莉帆の方が、姉をなだめることになってしまった。
「チョッと疲れただけだから、もう元気だよ」
「莉帆、あんたって子は」