甘い恋をおしえて


まさか、初夜を拒否されるほど嫌われているとは思っていなかった。

酔っ払っていた佑貴は怒りと虚しさで我を忘れそうになるほどだったが、豪華な部屋で一晩過ごした。

(初夜にひとり寝か……)

うとうとしながら、美しかった莉帆の花嫁姿を思い描いた。
ここまで避けられているとも思わずに、彼女を抱きたいと思った自分が情けなかった。

(俺たちに相応しい初夜だな)

翌朝になって、初めてスマートフォンのメッセージや着信に気がついた。

莉帆が胃潰瘍で三日ほど入院するというものだった。

(胃が悪くなるほど、この結婚はストレスなのか)

莉帆が倒れた時にお酒に溺れていたのが申し訳なくて、『ゆっくり休むように』とだけ叔母に伝言を頼み仕事に行くことにした。

それがふたりのすれ違いの始まりになったとは、佑貴は気がついていなかった。




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