甘い恋をおしえて


「お待たせ、要さん」

ワインレッドの口紅と、ショートカットにパールのピアスが姉らしい装いだ。

「梓、莉帆ちゃんから責められてたんだよ。今日のおすすめはって」
「あらあら、仕方ないわねえ」

義兄の甘えた喋り方に、姉はニコニコと答えている。
姉の方がみっつも年下なのに、このふたりの力関係はどうなっているのだろうかと莉帆はいつも不思議に思う。

「お茶席で探してみたけど、寺門様以外は特に印象に残らなかったわ」
「やっぱり」

さりげない会話を交わしながら、ふたりはベタベタとくっついている。
姉夫婦の仲がいいのはけっこうなのだが、経験値の低い莉帆は目のやり場に困ることがある。

「だいたい、莉帆ちゃんの理想が高くない?」
「だって……」

夫の佑貴にぴったりの女性を、莉帆は探さなければいけないのだ。
自分よりも彼に相応しい妻となり、宮川家の後継ぎを産んでくれる人を。

それが夫に内緒で義母と約束した、離婚の条件なのだから。




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