甘い恋をおしえて
「あの……」
銅像のように立つ夫に、恐る恐る声をかけた。すると、佑貴が振り向いた。
「せっかく新年を迎えたんだ。乾杯しないか?」
「乾杯ですか?」
「君は向こうでほとんど飲んでいないだろう?」
「ええ、まあ……」
夫の実家でお酒を飲めるようになるのに何年くらいかかるのかしらと、莉帆は思った。
遠慮なく振舞える嫁になる日なんて、想像もできない。
自分には永遠にあり得ないことだと気がついて莉帆は苦笑した。
それを是と受け取ったのか、着替えてからリビングでと言い残して佑貴が自室の方へ歩き出した。
仕方なく、莉帆も着換えようと自室に向かった。
広いマンションだから、無駄に部屋数だけはある。
夫婦でありながら、ふたりの部屋は別々だ。
いわゆる主寝室を佑貴が使い、莉帆はゲストルームを使っている。
かなり広いしトイレとシャワーも付いているから快適な部屋だ。
パーティードレスを脱いでさっとシャワーを浴びてから、莉帆はニットのワンピースをスポンと着てリビングに行った。