甘い恋をおしえて
自分は手酌でグラスに満たすと、莉帆の方に傾ける。
「明けましておめでとう。乾杯」
「おめでとうございます」
冷えたシャンパンは美味しかった。
宮川邸での不愉快さを忘れるほどに、喉から体全体に染み透っていく。
特になにを話すという訳でも無く、ふたりは静に飲んで時折つまみを口に入れた。
飲みやすかったからか、シャンパンのビンは次第に空になっていく。
「案外酒に強いんだな」
佑貴が莉帆の顔を見ながらポツリと言った。
これまで食事を一緒にしたことは何度もあったが、お酒を飲むのは初めてだ。
「そうでしょうか? あまり飲んだことがないので」
莉帆は酒自体に馴染みがない。
「顔に出ないだけか……これ以上はやめておいた方がいいかもな」
案外酔いが回っているのではと佑貴が言いだした。
お酒に誘ったのは夫の方じゃないかと、莉帆は少しむくれた。
それが酔った証拠だとは、莉帆は気がついていない。
佑貴が莉帆をじっと熱のこもった視線で見つめていることにも。