甘い恋をおしえて
冷たい土の上に佑貴はガックリと跪いた。
「莉帆……すまない」
思わず口から謝罪の言葉がこぼれ出た。
高梨家に対し、宮川家は許されないことをしていた。
莉帆の祖父を謂れの無い罪で陥れて家業を傾け、しかもそれを救済するという条件で莉帆を妻にしたのだ。
(謝って償えることじゃない)
高梨家が自力でここまで回復したことこそ素晴らしい。
あえて宮川家や丸光銀行が手を貸さなくても、あと数年もあれば持ち直しただろう。
佑貴の手は指先まで冷たく、体も心も凍えていた。
莉帆の体の温かさが恋しかった。
昨夜彼女を抱きしめて眠っていたのが嘘のように思われる。
(彼女になんて言えばいいんだ?)
嘘をついて、我が家の過去を知られないために妻にしてしまったようなものだ。
佑貴の心には、確かに彼女への愛しさはある。それと同じくらいに罪悪感も生まれてしまった。
(正直に話すべきか……)
それで彼女を失ってしまったらと思うと踏み切れない。
佑貴は絶望の中にいた。