甘い恋をおしえて



ふう~と、大きなため息がでる。
あの日は結局、佑貴が気に入る女性が現れたら離婚してもいいということで義母との話はまとまった。

(お義母さん、なんて言ってたかしら……清々する? 肩の荷が下りる?)

とにかく義母は、莉帆の方から離婚して出ていくと言いだしたのが嬉しそうだった。
まるで莉帆が言いだすのを待っていたような雰囲気だった。

(あの時のお義母さんの顔、忘れられないわ)

その場に居合わせた千紘がどんなに言葉をつくしても考えを変えなかった人だ。
このファイルの中から候補者を選んでもらうようにお義母さんに言えばいいだけだ。

(昨夜はなにも話せなかったから、もう一度きちんと佑貴さんと向き合おう)

結婚してから二年半もろくに話したことがなかったのだ。
昨夜のことは奇跡のようだ。
彼とゆっくりこれからのことを話し合おうと莉帆は思った。

だがその夜、何時になっても佑貴はふたりのマンションへは帰ってこなかった。

その翌日も、またその翌日も……。

待ち続ける莉帆の胸にあるのは、好きだった人に一度だけ抱かれた思い出だけだった。

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