甘い恋をおしえて
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佑貴は宮川家で、ハワイから千紘が帰国するのを待っていた。
どうしても当事者の口から確認したかったのだ。
契約結婚の形を取りながら、実は莉帆が事件を思い出しても言い含められるように宮川家側に取り込んだとしか思えない。
そんなことを考えつくのは祖父に似て狡猾なところのある千紘ぐらいなものだ。
莉帆にマンションに帰れない理由を伝えられないまま、新年四日の夜を迎えた。
「ただいま~」
賑やかに千紘が帰ってきた。
山ほどのハワイ土産物を持っての里帰りだ。
「あら? どうしたの佑貴。大晦日しか帰ってこないあなたがここにいるなんて」
「千紘叔母さん、話があるんだ」
「疲れてるのよ。今度にしてくれない?」
「大事な話だ」
甥の真剣な眼差しに、千紘も折れた。
「どこで話す?」
家族に聞かれたくない話だろうと思った千紘が水を向けると、佑貴は自分の部屋に向かってスタスタと歩き出した。
結婚してからはほとんど足を踏み入れていなかったのだろう。
宮川家の中でも奥まった場所にある佑貴の部屋は、掃除はしてあるがガランとした雰囲気だ。
「寒いじゃない! 人を呼び出すなら温かくして!」
呼びつけられた千紘は不機嫌だ。
佑貴は暖房のスイッチを入れてから、千紘にひとつだけあるソファーを勧めた。
自分はデスクの脇に立ち、千紘の機嫌がおさまるのを待っている。
「それで? なにか話があるんでしょ?」
「ああ」
「あなたがそんな顔をするってことは、莉帆さんのことかしら?」