甘い恋をおしえて
言いたいことは山ほどあった。だが、莉帆は最後まで虚勢を張った。
慰謝料もいらないと突っぱねたし、彼から誕生日やクリスマスに送られていた宝石類もすべて返した。
結婚する時に持ち込んだわずかな愛用品だけ持って実家に帰ってからも涙を見せなかった。
『離婚したいって言われたから、離婚しました』
簡単すぎて面白くもない離婚の理由だ。
莉帆の言葉を聞いた兄夫婦と姉夫婦の怒りはすさまじかった。
妹が佑貴のために尽くしていたことも、佑貴のために離婚を前提に再婚相手を探していたことも知っていたのだ。
京都の両親も、両家のためによかれと思っていたのに娘を犠牲にしてしまったと後悔していた。
感情的になっている家族を見て、逆に莉帆は冷静になれた。
(せめて佑貴さんにお似合いの人を探したかったな)
義母との約束は果たせなかったが、離婚はできたのだ。
(これでよかったんだ。みんなのために、一番いい結果だわ)
莉帆がようやく泣けたのは、宮崎に向かう飛行機の中だった。
眠ったふりをしてストールを被り、声もなくポロポロと涙をこぼし続けたのだ。
二時間近くの旅で、水分が空っぽになるまでとめどなく泣いた。