甘い恋をおしえて


大学では、莉帆が突然のシングルマザー宣言をしたら周囲に驚かれてしまった。
離婚していることは隠していなかったが、やはり珍しかったのだろう。
そんな時、譲二はまったく気にせず莉帆に接してくれた人だ。
彼自身がひとり親で育ったというし、海外生活も長かったから莉帆の生き方をシンプルに受け入れてくれた。
大学とサッカー部での勤勉な莉帆の仕事ぶりを『働き過ぎだ』と心配してくれる優しい人でもある。
碧仁が懐いていることもあって、莉帆も彼を友人として大切に思っている。

譲二との付き合いは、お試しのように選手の疲労回復や試合に向けての強化メニューを依頼されたことから始まった。
莉帆がしだいに妊婦らしくなってきても、譲二の態度はまったく変わらなかった。
そのうち運動選手の食事内容について話すことが増えて、莉帆が産休から復帰したら正式にサッカー部の栄養管理も任されるようになったのだ。

莉帆の住んでいる職員寮と譲二がいるサッカー部の寮が近いため、仕事や買い物の行き帰りによく出会う。
碧仁は幼いころから遊んでもらっているので、サッカー部員たちや譲二によく懐いていた。

(監督には迷惑ばかりかけているから、今度の遠征でお礼しなくちゃ)

莉帆は大学やサッカーという、まったく知らなかった世界で碧仁と生きていくことを決めたのだ。



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