甘い恋をおしえて


「高梨さんのご実家って、和菓子屋さんなんですか?」

莉帆はこれまで自分の実家のことなど譲二に話したことがなかった。
譲二が和菓子屋と耳にしたからか、興味ありげに尋ねてきた。

「はい。香風庵って言います」
「こうふうあん? あの有名な⁉」

譲二も店の名前を知っていたのか驚いている。

「有名かどうか……」
「いや、京都で香風庵の和菓子を食べましたよ」
「ありがとうございます。京都の店が発祥地みたいなもので、両親が経営しているんです」

譲二が、その時食べた和菓子を思い出したのか笑顔になった。

「美味しかったですよ。名前は忘れましたが、丸ごとの梅を使った和菓子でした」
「ありがとうございます。京都の店の名物です」

「だから、高梨さんのデザートがいつも美味しいんだ」

譲二は意外に甘党で、食物繊維やビタミン補給にと莉帆が考える小豆や果物を使ったデザートがお気に入りだった。

「箱根の合宿中に、香風庵の和菓子食べたいなあ」

譲二の甘い顔で言われると断りにくい。
つい、莉帆も和菓子を調達する約束をしてしまった。

「よかったらおやつに出しますよ。兄に伝えておきますね」
「あ、ボクも食べる!」

「はいはい、碧仁もね」
「ハイはひとつ!」

莉帆と譲二は顔を見合わせて笑った。




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