甘い恋をおしえて
(大丈夫。こんな場所にあの人が来るわけない)
佑貴が箱根に来るなら、保養所ではなく別荘だろう。
莉帆は行ったっことはなかったが、確か旧軽井沢には宮川家の別荘があった。
サッカー部が借りている研修センターとは離れているから、もし彼が軽井沢に来たとしても会うことはないはずだ。
莉帆は必死に落ち着こうとした。
「託児室は、保養所にあるようです。でも、碧仁なら預けなくても大丈夫な気がしますよ」
「そうですね。私の目の届くところにいさせます。ご迷惑にならないよう気をつけます」
莉帆は万が一を考えていた。宮川家の誰かに自分と碧仁を見られたら大変だ。
なるべく自分の目の届くところに碧仁をいさせようと思う。
譲二から碧仁を預けなくてもいいと言われたのはありがたかった。
「部員にも気をつけるよう声をかけておきましょう」
「ありがとうございます。助かります」
莉帆には遠征期間のわずか二週間が、とてつもなく長く感じられた。