甘い恋をおしえて


その時、「ママ~、じょうじ~」と呼ぶ声が聞こえてきた。
グラウンドから碧仁が手を大きく振りながらスタンドを見上げている。

「見て~。できたよ~」

以前から学生たちに教えてもらっていたリフティングがやっと出来たようだ。
小さなリフティングボールを上手に扱って足の甲でポンポンと二回、三回と操っている。
可愛らしい動きを見て、ドイツチームのスカウトマンたちが大喜びしている。中には拍手してくれる人もいた。

得意げな碧仁が、また大きく手を振った。

「ママ~」 

誰のことだろうと思ったのか、佑貴が辺りを見回している。
それを無視して、莉帆は譲二に先に帰る挨拶をした。

「軽食と飲み物はロッカールームに置いておきました。試合、頑張ってくださいね」

「高梨さん、ありがとう」
「お先に失礼します」

莉帆は佑貴のそばを横切って、碧仁を迎えにグランドに向かった。


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