甘い恋をおしえて
「よく来たな、碧仁!」
「また大きくなって」
待ちかねていた靖と兄嫁の和歌が、碧仁が『ただいま』と言ったことに感激している。
「うんうん! ここが碧仁の家だぞ!」
莉帆も大歓迎されて、すぐさまエレベーターで五階の住居へ上がる。
「また日に焼けたんじゃない?」
和歌がしげしげと莉帆の顔を見て、心配そうに声をかけてくる。
「そうなの、箱根でもけっこう外にいたから」
「忙しいのはわかるけど、身だしなみも気をつけないと」
和歌は莉帆の離婚は自分たちのせいだと考えているらしく、次こそ幸せな結婚をさせたいらしい。
いつ出会いがあるかわからないから、女らしくしてと何度も言われている。
莉帆はその気はないと伝えているのだが、和歌は諦めきれずに再婚相手を探しているようだ。
「これでいいのよ、お義姉さん。健康的だしシミも気にしないわ」
「もう、莉帆さんったら」
「ママ、シミってなあに」
碧仁の言葉に、つい和歌も苦笑してしまう。
エレベーターが五階に着くと、梓が待ち構えていた。
「お帰りなさい、莉帆」
「梓姉さん、久しぶり」
「ちっとも連絡くれないから、気にしてたのよ」
碧仁をハグしながら、莉帆には愚痴っぽく文句を言ってくる。
他愛ないお喋りを楽しむのも、家族ならではだ。
和歌も梓も、莉帆を気にかけてくれているのがわかって温かい気持ちになれた。