甘い恋をおしえて


その日の夕食は三家族の大集合になった。
和歌と梓がご馳走を準備してくれていたし、それぞれの子どもたちも幼い碧仁が珍しいようで面倒をみてくれる。
莉帆は大助かりで、久しぶりにゆっくり食事を楽しめた。

子どもたちが眠った後は、兄妹でお酒を飲むことにした。
莉帆は念のために、靖夫婦と梓夫婦にだけは佑貴のことを話しておくことにした。

「偶然だけど、佑貴さんに会ったの」

案の定、全員が驚いた顔をしている。

「どこで?」「まさか!」
「箱根のサッカー場に、彼が来たの」

偶然とはいえ、そんなことがあるのかという表情だ。

「碧仁には会ったの? 自分の子だってわかったかしら?」

梓が、皆が一番気になっていることを代弁するように聞いてきた。

「誰の子かは、わかっていないかもしれない」

碧仁が『ママ』とは呼んだが、それが莉帆だとは佑貴は思っていない顔だった。

(そういえば……こんなに髪型もなにもかも変わっているのに、よく私だって気がついたわね)

彼から『莉帆』と呼ばれたことを思い出していた。
うしろから見たら別人のようだと思うのに、佑貴は迷わず名前を呼んだのだ。

莉帆から話を聞いた家族の表情は暗い。

「ごめんね、心配かけて」
「なに言ってるの。妹のことを心配するのはあたり前でしょ」

この場にいる全員が、莉帆が妊娠を告げた時に佑貴から無視されたことを知っているのだ。

「莉帆ちゃん」

どうやら一番客観的に物事が見えている要が重い口を開いた。

「明日にでも、京都に行きな」
「え?」




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