甘い恋をおしえて


「もしも佑貴君が碧仁の存在を知ったら、絶対ここに来ると思うよ。彼に会いたくないなら、すぐに京都のお義父さんのところへ行った方がいい」

確信があるのか、要は断言する。
莉帆は東京に来たばかりだし、明朝に京都に向かうのは幼い碧仁にはハードすぎる気がして躊躇する。

「でも自分の子だと思ってないかもしれないし、彼は再婚してるんでしょ?」
「いや、彼はまだ独身だ」
「まさか!」

要から聞かされた事実に、莉帆は驚いた。
あれから五年以上経つのだ。あの義母が佑貴を再婚させないはずがない。
莉帆には信じられなかった。

「本当よ、莉帆」
「梓姉さん」

梓が肯定したので、莉帆も受け入れる。
莉帆と別れて、すぐに彼は再婚していると思い込んでいた。

「野村からも聞いている。莉帆ちゃんと離婚した後は、しばらくヨーロッパ支社にいたんだ」

要の友人の野村は、佑貴の秘書をしていた。
佑貴の仕事のためには家庭円満が一番だと、帰宅予定時間を莉帆に知らせてくれた人だ。


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