甘い恋をおしえて


「最近帰国して、彼は副社長になっている」

宮川商事の副社長と言えば、佑貴はかなりの立場になったといえる。
それなのに再婚していないのはどうしてなのか、莉帆にはわからないことばかりだ。

「佑貴君に碧仁を会わせたくないなら、京都のお父さんたちの所へ行った方がいい。副社長としての仕事があるから、彼もおいそれと京都までは動けないはずだ」

靖も要の意見に賛成のようだし、和歌と梓も頷いている。
ふたりは同じ女性として、母として、莉帆が二度と彼に会いたくない気持ちをよくわかってくれている。

「わかりました」

莉帆も、京都行きに頷いた。

「ゆっくり碧仁と遊べなくて残念だ」
「また、年末には帰ってきてね」

靖や梓の言葉に、莉帆は泣きたくなってきた。

「ありがとう。お兄さん、お姉さん」

離婚しても、なお佑貴の言動に惑わされている自分が情けなかった。

(強くならなくちゃ、碧仁のために)

気持ちよさそうに眠るわが子の愛らしい顔を見て、莉帆は涙をこらえた。



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