甘い恋をおしえて


翌朝、靖は早朝から工房に籠って新作の和菓子を作ってくれた。
京都に持っていって、両親に味見をしてほしいと言う。

碧仁がなかなか起きなかったので、出発時間は十時過ぎになってしまった。
寝起きはご機嫌が悪かった碧仁も、東京駅から新幹線に乗ると話すと笑顔を見せた。

「やったー」

息子が乗り物好きでよかったと莉帆は胸をなでおろす。
昨日は荷解きもしていなかったから、要の車にスーツケースをそのまま積み込んだ。

「お義兄さん、色々ありがとう」
「いや、もしかしたら大変なのはこれからだよ」

要は最悪のパターンを想定しているのか、表情が暗い。
離婚はあっさり決まったが、子どものことが知られたら宮川家はどう出てくるかわからないのだ。

「碧仁は私の子よ。誰にも渡さない」
「そうだね。僕たちも力になるよ」

従兄姉たちは碧仁ともっと遊びたかったのか、お別れに時間がかかっているようだ。
碧仁が住居スペースから一階にエレベーターで降りてくるのを、莉帆と要は店で待っていた。

十時の開店時間になって、香風庵の店員が昔ながらの暖簾をかける。
それと同時に、店に佑貴が入ってきた。



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