甘い恋をおしえて


「あの子は……」

佑貴は茫然と莉帆たちの姿を見送っていたが、莉帆の姉の梓と兄の靖が自分を見ているのに気がついた。
どちらも複雑な表情をしている。

「宮川さん、店ではお話できません。奥にどうぞ」

このまま立ち去ることもできなかったので、佑貴は梓の言葉に頷いた。
開店間もない時間だというのに、香風庵の店内は賑わい始めている。
客の前ではできない話だった。

梓は少し落ち着いてきたようだが、靖は怒りに満ちた目で佑貴をじっと見ていた。

「梓、まかせた」

そう言い残すと、その場からサッと奥に入っていった。

梓に案内されたのは、一階の奥にある応接室だった。
どこか懐かしい雰囲気の部屋で、サイドボードにはリンドウが活けられている。

「おかけください」
「朝から急にお訪ねして、申し訳ない」

座るなり、佑貴は梓に気になっていたことを尋ねた。

「あの子は、俺の子ですね」

佑貴は、昨日から胸の奥に(つか)えていた言葉をやっと口にすることができた。




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