甘い恋をおしえて
「あの子は、俺の子ですね」
煎茶を淹れながら、梓はその問いを無視した。
佑貴は構わずに話し続ける。
「昨日、箱根で莉帆とあの子に会ったんです」
茶を勧めながら、やっと梓は口を開いた。
「妹から聞いています。偶然だったと」
「あの子は、俺の子です」
梓は息をフーッと吐いてから、ゆっくりと返事をする。
「今さら、なにを言ってるんですか?」
佑貴に冷たい視線を向けると、言葉のひとつひとつを噛みしめるように話す。
「あの時、離婚した時に莉帆のお腹に子どもが?」
佑貴も梓の態度を気にしてなどいられない。
たくさんの疑問が胸の中に渦巻いているのだ。
思っていたことを口にして、誰かに問わずにはいられない。
梓は佑貴の問いをすぐに否定した。
「妊娠がわかったのは、離婚が成立した少しあとです。そこだけは間違えないでください」
納得できない気もしたが、佑貴は頷いた。
「でも、妊娠がわかったなら連絡してくれてもいいでしょう」
「は?」