大嫌いの先にあるもの
「終わった」

ゆかが学食のテーブルに突っ伏した。
気持ちはわかる。私も惨敗だったから。

試験中に余計な事ばっかり考えて、全然解けなかった。最後の五分で三行文章を書いたけど、完全にアウトだ。追試あるかな。なかったら完全に単位落ちる。

「『資本主義でも社会主義でもない、あなたの考える第三の経済モデルを論じなさい』って何?そんな講義したっけ?」
ゆかが言った。

「うん。あったよ」

向かい側に座った若菜が余裕ある態度でお蕎麦をすすった。
若菜はちゃんと論じられたんだろうな。

「えっ、いつ?」

ゆかが起き上がった。

「資本主義と社会主義の講義はあった。そこから自分で考えなさいって事だと思うよ」

確かに資本主義と社会主義の話を黒須は詳しくしてた。若菜の言う通りだ。そこから先は自分で考えないといけない。そういえば第三の経済モデルについても、お金を必要としないモデルとしての例を挙げてた。

あれを書けば良かったんだ。ノートにメモしたはずなのに、なんで試験中見つからなかったんだろう。あと一時間早く思い出せたら、三行だけの答案を出さずに済んだのに。

しかもあの答案、黒須が採点するんだよ。私の答案読むんだよ。黒須にバカだと思われる。本当に終わった。

「あー」

声にならない声をあげ、私もテーブルに突っ伏した。
精神的ダメージが大きい。
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