大嫌いの先にあるもの
アルバイトをしているレンタルDVD店までは自転車で通ってる。
通勤時間はおよそ15分。勤めて二年目だった。
母の所にいたくなかったから、家を出てバイトを始めた。学費以外は自分で何とか稼いでいる。
店に着くと黒シャツの制服に着替え、いつも通りのレジの開設作業と、店内の掃除を行い、朝礼を聞いた。
今朝は店長を入れて3名のスタッフが入ってる。通常は4名で業務にあたっているから忙しくなるかもしれない。
店長がバックヤードに行くと、主婦の滝本さんとレジでDVDの返却作業を始めた。
作業は返却されたDVDをレジでスキャンして登録していく。延滞があれば画面が赤くなり、そのDVDに会員番号、氏名、電話番号を書いたメモを貼り、時間のある時に催促の電話をする事になるけど、毎回、催促電話をするのは勇気がいる。
こちらは正当な主張をしているのに、延滞料金が発生している事を話すと受話器越しでもわかるぐらい険悪な空気になる。酷い時なんていきなり怒鳴られる。
今日は延滞がありませんようにと祈りかながらスキャンしていくと、レジ画面が真っ赤になった。
うわっ、延滞だ。
一週間分の料金が発生してる。
電話したくないな……。
「春音ちゃん、固まってるよ」
滝本さんに声をかけられた。