大嫌いの先にあるもの
「宮本君、何だ?」

「いやあ、なんかオーナーがそんなに心配そうにしている所を初めて見たっていうか。娘を溺愛している父親みたいで、面白くて」

「いくらなんでも二十歳の娘を持つ父親って年じゃない。こんな若い父親がいてたまるか」

「春音ちゃんとオーナーは16歳差だから、ありますよ」

「ちょっと宮本さん、変な事言わないで下さい。黒須が父親だなんて気持ち悪すぎです」

気持ち悪いって言葉が胸に突き刺さる。がっくりと肩が落ちた。
そんなに春音は僕が嫌なのか……。

「気持ち悪いって、春音ちゃん、それは言い過ぎじゃないかな」

「気持ち悪い物は気持ち悪いんです」

「オーナー、別にオーナーの事が気持ち悪いとかじゃなくて、あの、ですね」

宮本君が気遣ってくれるが、ショック過ぎて何も入って来ない。

気持ち悪いなんて初めて言われた。しかも春音に言われるなんて……。物凄く落ち込む。

グラスに三分の一残っていたダイキリを飲み干し、ウィスキーのロックを頼んだ。

「宮本君、ウィスキー早く」

「ただいま」

ウィスキーのロックが目の前に来て、それを水のように飲んだ。

「ちょっと、黒須」

春音が心配そうに止めるが、いつもより早いぺースで飲み続けた。
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