大嫌いの先にあるもの
春音に抱きしめられている。

背中には押し付けられた顔と体の感触をハッキリと感じる。
さっきと違って、春音は寝ぼけてそうしているんじゃない。

この状況が信じられない。
春音は心底、僕を嫌っているのではないのか?
今夜だって気持ち悪いって言ってたじゃないか。

なのに……好きって何だ?
一体、何が起きた?

これは夢か?

一層の事、春音の方を振り向いてみるか。
それで夢か現実かわかる。

だが、振り返る勇気がない。

好きって言葉に自分でも驚く程、動揺している。
胸がざわついて仕方ない。
鼓動も早くなっている。
手のひらは緊張した汗で濡れている。
たかが好きだと言われただけで、動揺し過ぎだ。

兄として妹に好かれる事は喜ばしい事なんだから、素直に喜べばいい。
これじゃあ、春音を女性として意識しているみたいじゃないか。

女性として……。

その言葉が引っかかる。

なぜだ?
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