大嫌いの先にあるもの
「会員証は本日からお使いになれます。こちらのリーフレットは会員規約が記載されておりますので、ご一読下さい」

会員証と一緒にリーフレットを黒須に渡し、手続きは終わった。

「ありがとう。早速何を借りるか探してくるよ」

黒須はDVDの棚が並ぶ店の奥の方へと歩いて行った。

「ぐっは!」

隣に立っていた滝本さんがいきなり両手で胸を押さえた。

「どうしたんですか?」
「やられた」
「え」
「一目惚れってこういう事を言うのね」
「一目惚れ?」
「あのお客さんに一目惚れしたの。イケメン過ぎる。恋愛映画から出て来たみたい。あー、どうしよう。まだドキドキしてる」

完全に恋する乙女になってる。
まずい。滝本さんが黒須に寝返ってしまう。

「しっかりして下さい。ご主人がいるでしょ」
「それとこれとは別。私、DVDを戻してくる」

棚の上の返却されたばかりのDVDの束を滝本さんが取ろうとした。
パッケージにDVDを戻しながら黒須に近づくかもしれない。

「私が行きます。レジお願いします」

これ以上、黒須の悪い影響を受けたら困る。
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