大嫌いの先にあるもの
「春音に余計な事するなって怒られると思って」

意外な答えに眉が上がる。私に怒られると思っていたんだ。

「そんな事で怒らないよ。気遣ってもらえてありがたいって思いました」

「そうかな。春音は絶対に怒ると思ったんだけどな。だから宮本君にも口止めしといたのに」

黒須が恨めしそうに宮本さんの方を見た。

「すみません。春音ちゃんがオーナーが来なくて寂しがっていたので、つい」

うわっ、宮本さん。余計な事を。

「別に寂しがってなんかないもん。ただ最近、バーで見かけないと思っていただけ」

恥ずかしくて黒須が座っている左側を見られない。

今の言葉、どんな風に受け取った?私の恋心、バレてないよね。

「これでもいろいろと忙しくてね」

「知ってるよ。平日は朝早くからいないし。でも、大学がないのにどこに行っているの?」

大学が夏休みなら、講師の仕事も休みのはず。大学講師とバーのオーナー以外に何をしているか気になる。

「相沢の会社に行っているんだよ」
「相沢さんの?」
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