大嫌いの先にあるもの
次の日は久しぶりに大学に行った。ゼミの鈴原先生の研究室が引っ越す為、そのお手伝いに来た。バイト代もたっぷりもらえるのでありがたい。

最初に教務課に行って、鈴原先生の研究室の鍵をもらった。それから隣の、5階建ての古い灰色のビルに入った。大学内で一番古い建物だった。エレベーターは一基しかなく、普段はボタンを押してもすぐには降りて来ない。

しかし、今日はすぐにエレベーターの扉が開いた。来週、取り壊されるこのビルに用事がある人はきっと私ぐらいだからだろう。

気分よくエレベーターに乗り込むと、スマホが振動した。鈴原先生からのメールだ。家の用事があるからこっちに来られるのはお昼ぐらいになる事と、高橋って人が荷物を取りに来るから渡して欲しいとの事だった。最後に遅れて行く事への謝罪が書かれていた。

まあ、引っ越しの作業は事前に指示をもらっていたから困る事はないよね。
人が訪ねて来るのはちょっと緊張するけど。

高橋さんか。先生のお客様だから失礼のないようにしないとな。

『了解しました』っと。先生にメールを返した。

よし、頑張りますか。

3階でエレベーターを降りて、研究室に向かった。
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