大嫌いの先にあるもの
「うーん、通天閣、札幌テレビ塔、名古屋テレビ塔、博多ポートタワー……、あと一つは何?」

春音が険しい顔をしている。
白ワインのボトルは空になり、ついにはウィスキーにまで春音は手を出している。アルコールが入った方が思いつくと言い出して。

そろそろ止めるべきだと思うが、こうして春音と過ごす夜が楽しくて、もう終わりにしようとは言い出せなかった。

「ねえ、ヒントは?」

「またヒントか」

「だって、全然浮かばないんだもん」

「温泉がある所」

「草津?」

「違う」

「熱海?」

「違う」

「鬼怒川?」

「違う。もう一個ヒント。博多ポートタワーと近い県」

「あっ、別府温泉?」

「正解。別府テレビ塔」

「やったー!これで全問正解だよね。ご褒美あるんだよね?」

「一応はね。でも、ヒントあげちゃったからな」

「黒須のけちー。いいじゃん。ご褒美ちょうだいよ」

普段の春音よりも甘えた感じが可愛い。酔っ払うと春音は甘えん坊になるようだ。

「何が欲しいんだ?」

「えへっ、添い寝」

「添い寝?」

「黒須に添い寝して欲しいの。いいでしょ?」

バッグとか、アクセサリーとか強請られると思っていた。

意外過ぎて、何と言ったらいいのか……。

添い寝か。
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