大嫌いの先にあるもの
午後2時。ようやく1時間の昼休憩。
滝本さんと隣のビルに入っているファミレスに入った。今日は前からランチを一緒に食べる約束をしていた。
昼のピークを過ぎた店内は適度にすいていて、静かだった。
滝本さんのママ友らしきウェイトレスさんに窓際の席まで案内してもらった。
「疲れたわね」
おしぼりで手を拭きながら、いつもの穏やかな笑みを滝本さんが浮かべた。
ほっとする。さっきまで怖かったから。
「今日は忙しいわね」
「そうですね。新規入会のお客様も多かったし」
「それで春音ちゃん、上の空になる程の事があったの?まさかまた住んでいる所がなくなったりしないわよね?」
心配そうに滝本さんが聞いて来た。
「それは大丈夫です」
「なら良かった。そういえば結局、今どこに住んでいるの?」
「言ってませんでしたっけ?」
「聞いていない」
黒須の事を何て言えばいいんだろう。姉の夫?親戚のおじさん?
「聞いちゃいけなかった?」
黙り込んでいる私に滝本さんの視線が注がれる。
「えーと、その、何と言うか、お姉ちゃんの所です」
少し後ろめたいけど、滝本さんに心配をかけない表現はこれが一番しっくりくる。
「お姉さんって、前に話していた10才年上の?」
「はい」
「それなら安心ね。じゃあ、上の空になっていたのは彼氏の事かしら?」
か、彼氏!
口に含んだ水を吹き出しそうになった。
滝本さんと隣のビルに入っているファミレスに入った。今日は前からランチを一緒に食べる約束をしていた。
昼のピークを過ぎた店内は適度にすいていて、静かだった。
滝本さんのママ友らしきウェイトレスさんに窓際の席まで案内してもらった。
「疲れたわね」
おしぼりで手を拭きながら、いつもの穏やかな笑みを滝本さんが浮かべた。
ほっとする。さっきまで怖かったから。
「今日は忙しいわね」
「そうですね。新規入会のお客様も多かったし」
「それで春音ちゃん、上の空になる程の事があったの?まさかまた住んでいる所がなくなったりしないわよね?」
心配そうに滝本さんが聞いて来た。
「それは大丈夫です」
「なら良かった。そういえば結局、今どこに住んでいるの?」
「言ってませんでしたっけ?」
「聞いていない」
黒須の事を何て言えばいいんだろう。姉の夫?親戚のおじさん?
「聞いちゃいけなかった?」
黙り込んでいる私に滝本さんの視線が注がれる。
「えーと、その、何と言うか、お姉ちゃんの所です」
少し後ろめたいけど、滝本さんに心配をかけない表現はこれが一番しっくりくる。
「お姉さんって、前に話していた10才年上の?」
「はい」
「それなら安心ね。じゃあ、上の空になっていたのは彼氏の事かしら?」
か、彼氏!
口に含んだ水を吹き出しそうになった。