大嫌いの先にあるもの
「か、彼氏なんていませんよ」

「じゃあ、片思い?その慌てぶりは」

滝本さんが楽しそうに笑った。
さすが滝本さん、恋愛系は鋭い。

「まあ、そんな感じです」

隠してもどうせ隠し切れないので認める事にした。

「もしかして、前に話していた大嫌いな人?お姉ちゃんの元旦那さんだっけ?」

またまた鋭い。なんでわかるの?

「えーと、はい」

ここまでバレては誤魔化し切れない。恋愛系の事では滝本さんの尋問は刑事みたいに鋭いし、しつこい。一緒に働く人たちが何人も自白をさせられているのを目撃して来た。

「キャー!やっぱりそうだったのね!」

滝本さんが興奮したようにテーブルをバシバシ叩いた。
静かな店内で悪目立ちする。

「滝本さん、落ち着いて下さい。他のお客さんの迷惑になりますから」

「ごめんなさい。嬉しくって。こういう話、大好きなのよ。春音ちゃんがついに恋をしたのね。あんなに無関心だったのに」
滝本さんが目を輝かせて見つめてくる。

「なんか春音ちゃん、お肌のつやが良くなったわよね。前より綺麗になったし」

「い、いえ、そんな事は」

「綺麗になったわよ。認めなさい。恋をすると女の子はどんどん綺麗になるんだから」

綺麗って言葉が前よりも嫌じゃない。それ所か綺麗になりたいって思うようになりつつある。恋しているからなのかな。
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