大嫌いの先にあるもの
「今日ね、おばあちゃんに会ったの」
春音が言葉を選ぶように慎重に話し出した。
「それでね、美香ちゃんと結婚している時、黒須には他にも女の人がいるって話を聞いたの」
またその話なのか。
同じ事を前にもあの人に、美香と春音の祖母に聞かれた。
ドクドクと脈が速くなり、不快な想いが胸に溢れた。
「ねえ、本当?」
眼鏡を外した、焦げ茶色の瞳が不安そうにこっちを向いた。
春音にそんな顔させたくないのに。
「春音はその話を聞いて、僕が信じられなくなった?」
「ずるい。質問を質問で返さないで。本当の事が知りたいの」
「前に同じ事を春音のおばあちゃんにも聞かれたよ。もちろん、僕は正直に答えたよ。そんな事はありませんって。だけど、信じてもらえなかった。美香と結婚しながら、僕には愛人がいたんだろうってほとんど決めつけられたよ」
信じてもらえなくて、本当に悔しい想いをした。
しかし、後でそれは誰かが巧妙に仕掛けた罠だったという事に気づいた。
「なんでおばあちゃんは黒須に愛人がいると思ったの?」
「聞いてないかい?」
春音が頭を左右に振った。
「そこまでは」
「だったら今度聞いてみるといい。FBIの人間から聞いたと言うだろう」
春音の両眉が大きく上がった。
「FBIって、アメリカのドラマとかに出てくるやつ?」
「まあ、そうだね。アメリカの連邦捜査局で、警察機関の一つだよ」
「そのFBIの人って美香ちゃんの事件を捜査しに来たって事?」
「表向きはそうだったんだと思う」
「表があるなら裏の事情もあるって事?」
「勘がいいね」
「どういう事?裏の事情って何?」
春音が眉頭を寄せ、眉間に皺を作った。
「目的は美香の遺品だったんだと思う。FBIの人間だと言ったのも本当の所はわからない。ただの成りすましだったかもしれない」
「なんか話が見えて来ないんだけど」
「春音にはまだ言ってなかったけど、真実を話す時が来たのかもしれないな」
「真実って?」
「美香が亡くなった日の事を話すよ」
春音が言葉を選ぶように慎重に話し出した。
「それでね、美香ちゃんと結婚している時、黒須には他にも女の人がいるって話を聞いたの」
またその話なのか。
同じ事を前にもあの人に、美香と春音の祖母に聞かれた。
ドクドクと脈が速くなり、不快な想いが胸に溢れた。
「ねえ、本当?」
眼鏡を外した、焦げ茶色の瞳が不安そうにこっちを向いた。
春音にそんな顔させたくないのに。
「春音はその話を聞いて、僕が信じられなくなった?」
「ずるい。質問を質問で返さないで。本当の事が知りたいの」
「前に同じ事を春音のおばあちゃんにも聞かれたよ。もちろん、僕は正直に答えたよ。そんな事はありませんって。だけど、信じてもらえなかった。美香と結婚しながら、僕には愛人がいたんだろうってほとんど決めつけられたよ」
信じてもらえなくて、本当に悔しい想いをした。
しかし、後でそれは誰かが巧妙に仕掛けた罠だったという事に気づいた。
「なんでおばあちゃんは黒須に愛人がいると思ったの?」
「聞いてないかい?」
春音が頭を左右に振った。
「そこまでは」
「だったら今度聞いてみるといい。FBIの人間から聞いたと言うだろう」
春音の両眉が大きく上がった。
「FBIって、アメリカのドラマとかに出てくるやつ?」
「まあ、そうだね。アメリカの連邦捜査局で、警察機関の一つだよ」
「そのFBIの人って美香ちゃんの事件を捜査しに来たって事?」
「表向きはそうだったんだと思う」
「表があるなら裏の事情もあるって事?」
「勘がいいね」
「どういう事?裏の事情って何?」
春音が眉頭を寄せ、眉間に皺を作った。
「目的は美香の遺品だったんだと思う。FBIの人間だと言ったのも本当の所はわからない。ただの成りすましだったかもしれない」
「なんか話が見えて来ないんだけど」
「春音にはまだ言ってなかったけど、真実を話す時が来たのかもしれないな」
「真実って?」
「美香が亡くなった日の事を話すよ」