大嫌いの先にあるもの
「春音との仲を修復する事が美香の死を乗り越える為には必要だって、ドクター言ってくれましたよね。だから大学以外でも春音との接点を増やしたんです」

「最初は悲しみを乗り越える為に春音さんと親しくなりたかったという事ですね」
ドクターが確認するように言った。

「そうです。それで春音にはバーテンダーとして働いてもらったんです。お酒を出す仕事だったので、酔っ払いに絡まれないかと心配で、監視カメラを設置したんです」
「監視カメラですか」
ドクターの視線が少し険しい。やり過ぎだと思われたのか。

「カメラの存在は春音にも伝えてありました。困った事があったらカメラに向かって助けを求めるようにって。だからこっそり見ていた訳じゃないですよ」

「黒須さんは監視カメラで春音さんの様子を見ていたという事ですね?」
「まあ、そうですね。店にいない時はスマホでも見られるようにしてあったので」

「それで何があったんですか?」
「一所懸命に働く春音の姿に心を動かされました。僕の事を嫌っているからいい加減に働くのかと思ったら、全然そうじゃない。春音の教育係の宮本君も本当に春音は一所懸命だって教えてくれました。それで段々心配になったんです」

「なぜ心配に?」
「春音は生活の為、バイトを掛け持ちしていたんです。働き過ぎて疲れないかと思いまして。昼間は大学もありますから」

「なるほど。バイトを掛け持ちしながら毎日大学にも通われていたと。確かに心配になる状況ですね」
「バーでのバイトを辞めさせようかとも思いましたが、言い出せませんでした」

「どうしてですか?」
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