大嫌いの先にあるもの

「春音さんからされたんですか?」
「いえ、僕からしました。その瞬間、どうしようもなく春音が愛しくて、気づいたらキスしていたんです。春音はキスを受け入れてくれました」
「だから気持ちに気づいたと?」
「まあ、そうです」
「キスまでしといて、気持ちはないと春音さんを突っぱねたという訳ですか。確かに春音さんは出て行きますね。何の意味もないキスをされたって思うでしょうから」

ドクターの言葉が痛い。

「突っぱねたというか、気持ちに応えられなかったんです」
「なぜ春音さんの気持ちに応えられなかったのですか?」

ドクターの声が強く響いた。

なぜだろうか?
この一週間ずっと考えている。

「多分、春音を妹以上に見た事がなかったから、驚いてしまったというか、言われた瞬間は頭が真っ白になってしまったんです」

ドクターが苦く笑った。

「では、春音さんにキスした時も妹以上に見ていなかったと?」

キスした時……。
春音の事が愛しくて堪らかった。
その愛しさは妹としてだったのか?
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