大嫌いの先にあるもの
本当に春音に会えば、この悶々とした気持ちの正体がわかるんだろうか。
ドクターのカウンセリングルームからの帰り、車を走らせながら、ずっと考えていた。

結局、ドクターは自分の気持ちを知りたかったら、春音に会うしかないというアドバイスしかくれなかった。

今、春音に会うのは気まずいと言っているのに。

しかし、そんな事も言っていられないか。悩むのは好きじゃない。
春音に会おう。

時刻は午後3時。この時間はまだレンタル店でバイトをしているはず。
店には来るなと言われているが、大学が夏休み中の為、会える場所はもうそこしかない。

また大嫌いだと言われるだろうか。
顔も見たくないと怒られるだろうか。

春音の怒っている顔しか想像できない。

しかし、よく考えればずっと春音は僕にそんな顔をして来たんだ。
今更、怒られようが、嫌われようが構うものか。

会いに行こう。

そう思った時、カーナビにセットしてあったスマホが鳴った。
相手は宮本君からだ。

ハンズフリー通話で出ると、宮本君の慌てたような声がした。

「オーナー、大変です!」
「どうした?」
「店に、Blue&Devilにすぐ来て下さい!愛理さんと春音ちゃんがケンカをしているんです」

愛理と春音がケンカだと!

「相沢はいないのか?」
「相沢さんは打ち合わせで留守にしています。俺じゃ止められません」
「わかった。すぐ行く」
通話を切ると、バーに向かってハンドルを切った。

全く、何をやっているんだ。春音も、愛理も。
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