大嫌いの先にあるもの
「あの、相沢さん、そのまま聞いてもらえますか」
春音の方を振り向こうとしたら、深刻な声でそう頼まれた。
まだ気づかれていないようだ。相沢とは背丈が同じぐらいだし、スーツだから後ろ姿が似てるんだろう。
「相沢さんに聞いてもらいたい話があるんです」
とりあえず黙って頷いた。
「ありがとうございます」
カウンター奥の食器棚に並ぶグラスが鏡のように春音の顔を写していた。
一週間ぶりに見た春音は少し痩せたようだ。
ちゃんとご飯を食べているだうろか。
無理をしていないだろうか。
「実は相談したい事があって。その、久しぶりに父に会いまして。母と父が離婚してから、父とは時々会うぐらいで、一緒に暮らしてはいないのですが、でも、父には大学の学費を出してもらっていて、それで恩義があってですね。その父に頼まれたんです。会って欲しい人がいるって」
会って欲しい人がいる?
嫌な予感がする。そのパターンはもしかして、あれではないのか。
「何と言うか、会って欲しい人というのは男の人で。父の取引先の会社の社長さんの息子だそうで。私より5歳年上で、将来は会社を継ぐ人だそうです。その人が私の写真を見て会ってみたいと言ってくれたそうで。父にとっては物凄くいい話で、私にとっても多分、いい話だと思うんです」
やっぱりそういう展開か。春音は美人だからな。写真を見て気に入るだろうな。くそ、何が社長の息子だ。なんか腹が立って来た。このイライラする気持ちは何だ?
春音の方を振り向こうとしたら、深刻な声でそう頼まれた。
まだ気づかれていないようだ。相沢とは背丈が同じぐらいだし、スーツだから後ろ姿が似てるんだろう。
「相沢さんに聞いてもらいたい話があるんです」
とりあえず黙って頷いた。
「ありがとうございます」
カウンター奥の食器棚に並ぶグラスが鏡のように春音の顔を写していた。
一週間ぶりに見た春音は少し痩せたようだ。
ちゃんとご飯を食べているだうろか。
無理をしていないだろうか。
「実は相談したい事があって。その、久しぶりに父に会いまして。母と父が離婚してから、父とは時々会うぐらいで、一緒に暮らしてはいないのですが、でも、父には大学の学費を出してもらっていて、それで恩義があってですね。その父に頼まれたんです。会って欲しい人がいるって」
会って欲しい人がいる?
嫌な予感がする。そのパターンはもしかして、あれではないのか。
「何と言うか、会って欲しい人というのは男の人で。父の取引先の会社の社長さんの息子だそうで。私より5歳年上で、将来は会社を継ぐ人だそうです。その人が私の写真を見て会ってみたいと言ってくれたそうで。父にとっては物凄くいい話で、私にとっても多分、いい話だと思うんです」
やっぱりそういう展開か。春音は美人だからな。写真を見て気に入るだろうな。くそ、何が社長の息子だ。なんか腹が立って来た。このイライラする気持ちは何だ?