大嫌いの先にあるもの
「美香、君と約束したよね。春音を妹にするって。その約束を破るよ。すまない」

約束を破るって言葉に鼓動が早くなった。
まさか、それって妹としても私と付き合えないって事?
13才から恋してるなんて告白をしてしまったから?

もしかしたら、これは黒須なりの私とのお別れの儀式なのかもしれない。
美香ちゃんの前でハッキリと言う事で、私の未練を断ち切ろうとしているんだ。

明日のお見合いに私が迷いなく行けるように……。

酷いよ、黒須。

なんて残酷なの。美香ちゃんのお墓参りに来る度に黒須にフラれた事、思い出すじゃない。こんな苦しい思い出作りたくない。

黒須がそっと墓前に赤い薔薇を供えた。
それから、ゆっくりとこっちを向いた。

黒須の目を見れない。
次はさよならを言われるんだ。もう二度と会う事はないって言われるんだ。

だったら私からさよならを言った方がまし。

「黒須の気持ちわかったよ。美香ちゃんの前で言いたかったんだね。私はもう妹じゃないって。他人だって。わかったよ。これでさよならでいいよ。もう二度と黒須とは会わないから安心して。さよなら、黒須」

走り出そうとしたら、腕を掴まれ、引き寄せられた。
あっという間に黒須の腕の中。

一体これはどういう状況?
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