大嫌いの先にあるもの
「うーん、何と言ったらいいか」
本気で黒須が困っている。こんな余裕のない黒須初めて見た。

「昔、相沢に言われたんだよ。その、言葉が出て来ない時は行動で示せって。だからだな……、今のは、そういう事だ」
歯切れの悪い説明に“?”が浮かんでしまう。

そういう事って何?
つい眉間に皺が寄る。

「なんでその顔?」
黒須が私の顔を見て苦笑を浮かべた。

「だって全然、何が言いたいのかわからないんだもん。核心を誤魔化してるって言うか。その説明気持ち悪い」
「き、気持ち悪いか」
「うん。なんか気持ち悪い」
「二度も言うな。落ち込むから」
「落ち込むの?」
「落ち込むよ。これでも僕は自分の気持ちを精一杯言葉にしているんだから。困ったな。どうしたら春音に伝わるんだろうか」

さらに深いため息をつき、黒須は頭を抱えてしまった。さっきから何に黒須が戸惑っているのかわからない。

「そうだよな。ハッキリと言葉にしないとわからないよな」
「わからないよ」
「これから僕が話す事を最後まで聞くように。途中で逃げるのはなしだからな」
「わかった。どんなに酷い事を言われても逃げない」
力強く頷くと、黒須が深呼吸をした。
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