大嫌いの先にあるもの
「春音」
黒須が覚悟を決めたようにじっとこっちを見た。

「春音がいないと息が出来ない」
「何それ?死んじゃうじゃん」
「だから、そういう事だ」
「私がいないと死んじゃうって言いたいの?どうして?」
黒須が困ったようにまた頭をかいた。

「それは春音とずっと一緒にいたいから。朝は春音の隣で目を覚ましたいし、夜は一緒に眠りたい」
「つまり黒須の所に戻って来て欲しいって事?」
「出来れば」
「私、料理下手だよ」
「僕が料理するからいい」
「一緒に寝るのは疲れるから止めて欲しいな」
「わかった。その代わり朝ご飯は毎日一緒に食べたい。寝る前はおやすみをして欲しい」
「なんか子どもみたいな要求だね」
クスクスと笑いながら、ハッとした。

これってもしかして……愛の告白?
そう思ったら、さっきの不可解な言葉がつながる。

――春音が二度と会わないなんて事を言うから、こっちだって余裕がなくなるんだ。
――言葉が出て来ない時は行動で示せって。だからだな……、今のは、そういう事だ。

いきなり抱きしめたのも、キスしてきたのも、気持ちを行動で示したって事?私に会えなくなるのが嫌なぐらい好きだから……。

心臓がドキンとした。
黒須が私を好き?

もう片思いじゃないの?
両想いになったって事?

「黒須、あのさ。つまり、私の事が好きなの?」
「さっきからそう言ってるじゃないか」

怒ったような照れたような顔を黒須がした。

嘘……。
夢見てるみたい。
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