大嫌いの先にあるもの
2限はゆかも若菜も私も空き時間で、今大学内のカフェにいる。2人の視線は向かい側に座る黒須に注がれている。

「質問の内容が込み入っているので、コーヒーでも飲みながら話しませんか?」

という、ゆかの誘いに黒須が乗った為だ。

誘ったゆかもまさか黒須が一緒にお茶をするとは思わず、黒須が承諾した瞬間、動揺のあまり少し挙動不審になった。

カフェに入った瞬間から周りの学生たちが物珍しそうに黒須に視線を向けていた。やっぱり黒須は目立つ存在だ。

「君たちいつもここに来るの?」

白いコーヒーカップをソーサーに置いた黒須が向かい側に座るゆかと若菜に視線を向けた。

私は自然と黒須の隣に座ってしまった。
左側に座る黒須の方をさっきから全く見れない。黒須との関係がバレるのではないかと、冷や冷やし、緊張で全然、黒須に買ってもらったブラックコーヒーが喉を通らない。

黒須は私との事をバラすつもりなんだろうか?
その辺について話し合うのを忘れていた。

できれば卒業するまでは内緒にしておきたい。
黒須と交際している事がバレたら、大学中の女子を敵に回すし、黒須の彼女という目できっと注目を浴びてしまう。未だに黒縁眼鏡が手放せない地味な私が全学生から注目されるなんて、考えただけでゾッとする。

「そうなんです。空き時間はここのカフェでお茶してます。先生、ここチョコレートパフェが名物なんですよ。ビールジョッキに入ってて、二人分ぐらいの量があって。だけど春音なんて軽く食べちゃうんですよ」

ゆかがハキハキと余計な事を話し出した。
こんな時にどうして私の話なんて……。ゆかの意地悪。

「へえー、君はパフェが好きなんだね」
黒須に話しかけられて、ドキっとした。

「は、はい」
 俯いたまま返事をした。
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