大嫌いの先にあるもの
「肉体関係を迫られてるって訳じゃないんだけど」

黒須は強引にそういう事をする人じゃない。昨日だって、私が無理だと言ったらやめてくれた。

今日だって研究室に誘ったのは2人だけで話しがしたかっただけだと思うし。ただ、そういう雰囲気になるのが怖くていけなかった。

「そういう雰囲気になるが怖いの。何度も拒んだら嫌われそうだし、かと言ってそういう事をするのは気が引けるし」

「つまり、恋人とセックスする事が怖いって事?」
私の話をまとめるように若菜が言った。

「うん」
「どうして?」

ゆかが聞いた。

「どうしてって……裸を見られるのが怖いから」

若菜とゆかがぷっと吹き出した。
自分でも幼い事を言っているのはわかっている。

「春音ちゃん、心配しなくて大丈夫だよ。たとえ胸が小さくても、ウェストに肉がついていようとも、好きな相手なら受け入れてくれるよ。気になっているのは本人だけなんだから」

若菜の言葉にゆかが大きく頷いた。

「そうそう。私なんて絶対春音よりぜい肉ついてるけど、彼に全部見せてるよ。ぷよぷよした所も可愛いなんて言ってくれるんだよね。男の人って意外とぽっちゃりしているのも好きみたい」

そういう物なんだろうか。
でも、黒須にこの体をさらけ出す勇気がない。だって、私の体には……

(あざ)があるの」

思い切って口にした。
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