大嫌いの先にあるもの
空港からはチャーターしたタクシーでマリブに向かった。海岸線に沿って西に26マイル(約41キロ)いった先にジャニスの叔母の家がある。

順調にいけば1時間以内に目的地に着くだろう。

左側の窓を見ると、青い空と太陽の光を反射して輝く海が見える。快晴の空を見て、九月のロサンゼルスは雨が降らないという事を昔、美香に言った事を思い出した。

美香と来た時はサンタモニカの遊園地で半日過ごした。それから次の日はビバリーヒルズにあるロデオドライブにも行った。『プリティウーマン』の映画に出て来た場所を美香が歩いてみたいと言ったからだった。

腕を組んで美香と歩いたのが、つい昨日の事のように感じる。あれからもう六年、経つのか。

春音を愛してしまった僕を見て、美香はどう思うだろうか?
一生美香だけを愛すると誓った僕を裏切者だと怒るか、それとも大事な妹に手を出した事を叱るのか……。

どちらにしても、美香が生きていたらきっと怒られる。

いや、美香が生きていたら春音を愛する事もなかったのか。

そう思うと複雑だ。

春音にしたら失礼な話かもしれない。13才の頃から僕を想ってくれていたのに。

春音は今頃、どうしているだろうか。
今の時期は日本が16時間進んでいるから、次の日の深夜3時過ぎだ。寝てるな。

さっきのメッセージの返信ぐらいはしてもいいか。

“無事にロサンゼルスに到着。お土産は何がいい?”
そう書いて送信した。
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