大嫌いの先にあるもの
チェックインしたロサンゼルスダウンタウンにあるホテルに戻って来たのは夜の11時頃だった。

デヴィッドを探してウエストハリウッドにあるクラブやバーを探し回ったが、今夜は見つからなかった。

歩き回ったので足の裏が痛い。
武装を解くようにスーツを脱ぎ捨て、ワイシャツとスラックスだけの姿でベッドに寝転がった。

張り詰めていた気持ちが緩み、相沢から電話をもらっていた事を思い出した。

ソファの背にかけた上着からスマホを抜き出し、再びベッドに横になって相沢に電話した。

「収穫はありましたか?」
電話に出ると、相沢は挨拶もなく聞いて来た。

「ジャニスが亡くなる一週間前に幼なじみの男と会っていた事がわかった」
「報告書にあったギャングと関係のある男ですね」
「そうだ。デヴィッドと言って、ジャニスと同じ年だそうだ。写真を見たか?」
「ええ。添付してもらった写真は見ました」
「相沢、見覚えあるか?僕は全くないんだが」
「私もありません」
「そうか」
相沢がニューヨークで見かけているかもと期待したが、そう都合よくいかないか。世界中から大勢の人間が行き来している街なんだから。

「デヴィッドは本当にロサンゼルスにいるんですか?」
「何年か前にバーで見かけた事があるとジャニスの叔母さんが言っていたよ。今夜は目撃したというバーを中心に探したんだが見つからなかった」
思わずため息がこぼれた。

「デヴィッドの話を聞けただけでも、そっちに飛んだかいがありましたよ」
相沢が珍しく慰めてくれる。僕の声はかなりくたびれているんだろうか。

「そうだな」
「もう帰って来たらどうですか?デヴィッドの調査は現地の人間に任せて」
「もう少しだけ自分の足で探したい。事件の真相にたどり着けそうな予感がするんだ」

「立花さんが寂しがっていますよ。連絡してあげて下さい」
春音の名前を聞いた瞬間、疲れが吹き飛んだ。

「春音に会ったのか?」
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