大嫌いの先にあるもの
「その懐中時計、まさか美香のか?」
「うん。美香ちゃんの遺品だっておばあちゃんがくれたの。私ずっとリュックに入れて持ち歩いていた」
「春音が持っていたなんて……。灯台下暗しだな。開けていいか?」
「うん」
黒須が金色の蓋を開いて中を見た。
「何か細い物持ってるか?」
「細い物って、ソーイングセットの針とかでいい?」
「そんな物も持ち歩ているのか。女の子だな」
「だっておばあちゃんがボタンが外れた時はすぐにつけられるように持っていなさいって言うから」
「春音のおばあちゃんは凄いな」
「はい、これ」
携帯用のソーイングセットから縫い針を取り、黒須に差し出した。
「時計をこうやって持っててくれるか?」
「うん」
指示された向きで懐中時計を持つと、黒須が縫い針で文字盤の隙間をつっつき、文字盤を外した。
文字盤の裏を見ると米粒程の大きさの黒い物体があった。
「きっとこれだ」
「これがマイクロチップ?」
「そうだ。これのせいで美香は殺される事になったんだ」
黒須が悔しそうに唇を噛んだ。
こんな小さな物のせいで、美香ちゃんの命が奪われたなんて……。
ジャズピアニストとしてこれからだったのに。
――春音、今度私のCDが出る事になったんだよ。今日、音楽会社の人と契約して来たの。来週からレコーディングなんだ。
電話でそう話す美香ちゃんの声はとても嬉しそうだった。
――おめでとう。美香ちゃん。絶対にCD買うからサインしてよね。
――春音には一番にするよ。私の一番のファンだもんね。
――一番は旦那さんにサインしてあげるんじゃないの?
――圭介よりも春音が一番。結婚しても変わらないからね。
昨日の事のように思い出した。
あれが最後の電話だったんだ。
胸が張り裂けそうになる。
黒須の顔を見たら涙が溢れた。
「春音、もう大丈夫だ。犯人は捕まったから。大丈夫だよ」
泣きじゃくる私を右腕で抱きしめながら、何度もそう黒須が言ってくれた。
「うん。美香ちゃんの遺品だっておばあちゃんがくれたの。私ずっとリュックに入れて持ち歩いていた」
「春音が持っていたなんて……。灯台下暗しだな。開けていいか?」
「うん」
黒須が金色の蓋を開いて中を見た。
「何か細い物持ってるか?」
「細い物って、ソーイングセットの針とかでいい?」
「そんな物も持ち歩ているのか。女の子だな」
「だっておばあちゃんがボタンが外れた時はすぐにつけられるように持っていなさいって言うから」
「春音のおばあちゃんは凄いな」
「はい、これ」
携帯用のソーイングセットから縫い針を取り、黒須に差し出した。
「時計をこうやって持っててくれるか?」
「うん」
指示された向きで懐中時計を持つと、黒須が縫い針で文字盤の隙間をつっつき、文字盤を外した。
文字盤の裏を見ると米粒程の大きさの黒い物体があった。
「きっとこれだ」
「これがマイクロチップ?」
「そうだ。これのせいで美香は殺される事になったんだ」
黒須が悔しそうに唇を噛んだ。
こんな小さな物のせいで、美香ちゃんの命が奪われたなんて……。
ジャズピアニストとしてこれからだったのに。
――春音、今度私のCDが出る事になったんだよ。今日、音楽会社の人と契約して来たの。来週からレコーディングなんだ。
電話でそう話す美香ちゃんの声はとても嬉しそうだった。
――おめでとう。美香ちゃん。絶対にCD買うからサインしてよね。
――春音には一番にするよ。私の一番のファンだもんね。
――一番は旦那さんにサインしてあげるんじゃないの?
――圭介よりも春音が一番。結婚しても変わらないからね。
昨日の事のように思い出した。
あれが最後の電話だったんだ。
胸が張り裂けそうになる。
黒須の顔を見たら涙が溢れた。
「春音、もう大丈夫だ。犯人は捕まったから。大丈夫だよ」
泣きじゃくる私を右腕で抱きしめながら、何度もそう黒須が言ってくれた。