大嫌いの先にあるもの
車で出掛けるのかと思ったら、地下鉄に乗った。新宿で京王線に乗り換えた辺りから、どこに行くのか何となくわかった。

きっと美香ちゃんのお墓参りだ。今日は天気もいいし、多磨霊園を歩くのは楽しいかも。

そんな事を思いながら調布駅の一つ手前、布田まで来ると、黒須に「降りるよ」と言われたから驚いた。布田はおばあちゃん家の最寄り駅……。

見慣れた駅前を黒須と一緒に歩きながら緊張してくる。もう間違いない。今日の行き先はおばあちゃん家だ。

よく見ると、黒須が持っている紙袋はおばあちゃんが好きな和菓子屋さんの物だ。中身はきっとおばあちゃんの好物のカステラ。

なんで和菓子屋さんの袋を見た時に気づかなかったんだろう。
鳩尾の辺りがどんどん重たくなってくる。

おばあちゃんに勘当されてから連絡は一切取っていない。おばあちゃんからメールも電話もなかった。

「大丈夫だよ」

不安そうにしていると、黒須がぎゅっと手を握ってくれた。

「FBIのロペス捜査官に責任はちゃんと取ってもらったから安心して」

思いがけない名前に顔を上げると、黒須が悪戯を企むように笑った。

「どういう事?」
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