大嫌いの先にあるもの

黒須のお供

土曜日の朝の九時に言われた横浜のシティホテルに行くと、ホテルの制服を着た女性に声をかけられた。

「立花春音様でしょうか？」

知らない人にいきなり名前を呼ばれて、少し戸惑う。

「はい、そうですが」
「黒須様から聞いております。どうぞこちらへ」

黒須の指示だと知り、白い大理石の床を歩きながら女性について行った。
わざわざ横浜まで人を呼び出しておいて、黒須は来てないらしい。
今日はどんな事をさせられるのかも全く聞かされていない。

吹き抜けが立派で、恐縮してしまう程お洒落なホテルのロビーにいる事が恥ずかしくなってくる。

黒須がいつもの服装でいいと言ったから、その通りにして来たけど、大失敗だった。量販店で買ったTシャツとジーパン姿があまりにも場違いだ。

「どうぞ」と案内され、エレベーターに乗った。
どこに連れて行かれるのか不安に思っていると、2階ですぐ停まり、またホテルの人について歩いた。

2階なら階段でも良かったのにと思いながら、豪華なシャンデリアが輝く廊下を進み、『美容室』と、金色のプレートがかかる部屋の前で立ち止まった。

どうやらここが目的地らしい。

しかし美容室で一体何をするのか？
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